外張断熱工法の注意点
今まで外断熱と充填断熱を施工した経験から、より良い家造りの参考にして頂ければ幸いです。
1.基礎も外断熱
シロアリを恐れ、基礎だけ内断熱にする方法がありますが、冷えた基礎コンクリートの上に暖かい土台が乗る事になり、土台と基礎の間で結露します。結露から土台が腐リ、シロアリが進入する可能性が高くなります。基礎も外断熱にして、土台も基礎も乾燥していれば、やまとシロアリなら大丈夫です。このように断言出来るのは、浴室のリフォームで、タイルを剥がすと、常に濡れていた部分はシロアリにやられていますが、それ以外の木部はまったく異常ありません。そのような経験からです。いえシロアリの生息地域でも、基礎外断熱材にシロアリの食害を受けにくい防蟻断熱材を使用し、断熱不足分は基礎内側にもスタイロフオーム等で補う方法と、土台下にアリダンシートを敷きアリ返しする方法があります。 基礎断熱では床温度は室温より2℃前後低くなります。この事を知らないと、冬場では今ひとつ満足感が得られません。対策としては床下空間に換気設備から排気を取り、室内の暖かい空気を床下に入れる方法と、床下エアコン暖房や床暖房を取り入れる方法があります。
2.外断熱イコール高断熱ではない
次世代省エネ基準の仕様規定では、首都圏Ⅳ地域は、屋根または天井に押出し法ポリスチレンフォーム1種(熱伝導率0.040~0.035W/mK)では 160㍉の厚さが必要です。形式認定等の性能規定では50㍉でも認定されていますが、これでは断熱不足です。私の経験では硬質ウレタン(熱伝導率0.021W/mK)で100㍉は必要です。押出し法ポリスチレンフォーム1種(熱伝導率0.040~0.035W/mK) では200㍉です。この事をしっかり受け止めないと断熱不足になり、せっかくの外断熱住宅なのに夏暑く冬寒い家になります。
3.外断熱材と外壁材の支持方法
外張断熱工法は結露せず建物の耐久性が向上します。それに伴い各部分も長期の年数に耐えられる仕様にする必要があります。外断熱材と外壁材を長期間支持するために、釘は使用せずビス止めにします。そして径4.0㍉のビスを受ける間柱が27㍉の厚みでは、ビスが5㍉真から外れると割れやすく、40㍉位の間柱に受け、しっかりと固定します。外断熱材をビスと共に止める胴ぶちは15㍉の厚みでは割れやすく、24㍉の厚みにビス頭が沈み込む位の力で留めるとしっかり止まります。
4.屋根断熱材と壁断熱材のつなぎ目がポイント
屋根断熱材と壁断熱材の接点は、現場発泡ウレタンでつなぎますが、気密劣化しやすい部分です。外からポリエチレンシートで補強する事により長期間安定した高気密化が可能です。
シロアリ対策
シロアリの種類と特徴
日本で主に家屋に被害をもたらすシロアリは主に次の4種です。
土壌性 シロアリ |
ヤマトシロアリ | 北海道北部を除く、ほぼ全国に分布 |
イエシロアリ | 関東以西以南に分布 | |
乾材 シロアリ |
アメリカカンザイシロアリ | 全国に点在 |
ダイコクシロアリ | 奄美大島以南の南西諸島と小笠原諸島に分布 |
土壌性シロアリと乾材シロアリ
土壌シロアリにとって水分は非常に重要で、土中から蟻道(ぎどう・シロアリの通るトンネル)を伸ばして水を運び、木材を加害します。
一方、乾材シロアリは乾燥した木材に含まれるわずかな水分で生きられるので、 輸入家具からや、羽アリが飛来して小屋裏に上がります。土壌性シロアリとは侵入経路が異なるので、同じ措置では防ぐことができません。
ヤマトシロアリとイエシロアリ
ヤマトシロアリは寒さに強く、北海道北部を除く全国に分布しています。濡れた材を好み、被害件数はイエシロアリを圧倒しています。
イエシロアリは世界で最も加害力が強い種です。 寒さに弱く、関東以西以南に生息しますが、温暖化や住宅の高断熱化で”前線”が北上しています。 乾いた材でも濡らしながら食害していきます。
アメリカカンザイシロアリ
アメリカカンザイシロアリは、乾いた木材中の僅かな水分で生育できるシロアリです。 元々日本には居なかった種なのですが、木材や家具の輸入によって運び込まれたようです。 土の中に巣をつくるヤマトシロアリやイエシロアリと違って、加害した木の中に巣(孔道)をつくり、 蟻道や蟻土を作りません。また、温度変化や環境湿度の影響を受けにくいとされています。
首都圏に生息するシロアリについて
主に生息しているのはヤマトシロアリであると思われます。湿った場所を好むため、高断熱・高気密で結露を防ぎ、木材が乾燥している状態ならば、被害を受ける可能性は低いと考えます。しかし、温暖化の影響でイエシロアリが生息する可能性が高くなってきました。また、アメリカカンザイシロアリの被害も拡大している状況から、これらのシロアリへの対策も必要となります。
ヤマトシロアリ・イエシロアリ対策
弊社では以下のような対策をしています。
隙間のない基礎
ベタ基礎で一体打ちのため、基礎底面からの侵入は困難です。
土台の炭化
表面を炭化させることにより、防蟻と防腐効果があります。
木部の防腐・防蟻
「ホウ酸塩」を主原料とした防腐・防蟻剤(エコボロンPRO)を土台~間柱など基礎天端から1mまでの高さの木部に塗布しています。
基礎と外構の隙間
シロアリ駆除剤を基礎周囲に染み込ませるため、基礎と外構(玄関ポーチ、デッキ、駐車スペース(コンクリート打ち))の間に隙間を設けます。
結露しない構造
窓や壁の中が結露しない断熱構造です。
<施主様へのお願い>
定期的に基礎の周囲にハチクサンを散布してください。また、土壌性シロアリは湿った場所を好むため、玄関を含む基礎の周辺はできるだけ乾燥させた状態にしておいてください。
エコボロンPROの特徴
エコボロンの主原料は「ホウ酸塩鉱物」です。ホウ酸塩は安定した無機物なので分解されず、また揮発・蒸発することもないため、非接地・非曝露の条件下では効果が長期間に渡って持続します。
土壌処理剤ハチクサンFLの特徴
ネオニコチノイド系の非忌避性の殺虫剤を使用し、シロアリを効果的に薬剤へ接触させ確実に致死させる「ドミノ効果」を発現します。新築、既築でも使用され、土壌処理のシロアリ防除用として安心して使用できます。
アメリカカンザイシロアリ対策
乾材シロアリの侵入は、羽アリの飛来と被害材の搬入があります。蟻道や蟻土を作らないため、発見は難しいのですが、被害の進行はごくゆっくりであることから、早期発見・駆除が一番の対策です。
一定の被害がある場合、粒状の乾いた糞(ルーペで見ると均一な俵状)が発見されます。
ごく初期には糞は発見されず、侵入部位には柔らかで軽く、しかも新鮮な木粉(木屑)の小さなまとまりが見られます。この場合、付近に羽根が落ちていることがあります。
参考情報:リンク
- >シロアリ豆知識>シロアリについて>アメリカカンザイシロアリとは?
- >商品紹介>シロアリ・腐朽予防>エコボロンPRO
- >生活環境製品>シロアリ製品>土壌処理剤 ハチクサンFL