高断熱・高気密住宅は一部屋に一台のエアコンは必要ありません。

ではどの程度の能力のエアコンが何台必要なのでしょうか。

新住協理事、西方里見氏の新刊「プロとして恥をかかないためのゼロエネルギー住宅のつくり方」に松尾和也式計算式が掲載されています。

定格暖房能力(W)=1.7{対象床面積㎡×Q値×(23℃-最低外気温)-4.6×対象床面積㎡}
例えばQ値1.00、100㎡の住宅では、1.7{100㎡×1.00×(23℃-0℃)-4.6×100㎡}=3450Wとなり、4.0KWのエアコン1台で賄えることとなります。

夏期の冷房能力は、内外温度差が冬期より小さいため、冷房能力の方が小さくなります。

ただし夏の冷房は適当に日射遮蔽された住宅の指標であり、日射遮蔽の配慮がない場合はこの限りではありません。

Q値が1.00W/㎡Kの場合、100㎡(30坪)の住宅では、4.0KWのエアコン1台で冷暖房が可能となります。

しかし一階と二階で分れ、部屋が仕切られている場合がほとんどですから、どこにエアコンを設置して、どうやって各部屋を均等に冷暖房するのでしょうか。

そこで、独立行政法人・建築研究所理事長 東京大学名誉教授 坂本雄三先生が推進している冷暖房システム「YUKACOシステム」の登場となります。

「YUCACOシステムにおいて核となる要素は、①建物の断熱・気密化、②高効率のエアコン、③高効率の小型ファンの三つです。

たった1台のエアコンでもって、建物全体の暖冷房を賄うというのがこのシステムの特徴でもあります。それを可能にしているのが、 ①②③の要素であり、技術なのです。技術のポテンシャルとしては、これらは20世紀の終わりくらいには確立されていたかもしれません。しかし、その三つを巧みに組み合わせ、省エネルギーで快適な住宅空調システムとして確立するまでには少し時間がかかりました。1台のエアコンで創られる空調用の熱を建物の隅々まで運搬するという発想が不十分だったのです」

一台のエアコンで全館空調するシステムは確立しています。ハリマハウスでは、屋根裏空間にエアコンを一台設置して屋根裏を冷気溜まりにします。そして4W程度の高効率の小型ファンで各部屋に冷気を運び込みます。

屋根裏を冷気溜まりにする理由は、屋根裏からの輻射熱を二階へ伝えないためで、二階にエアコンを持ってきたのでは、室温は低いのに屋根面(天井)からの輻射熱で心地悪い環境になってしまいます。

屋根裏からのマイルドな冷気と天井からの冷輻射で、気持ち良い涼しさが得られます。

冬季は蓄熱式床暖房と組み合わせ屋根裏のエアコンを補助暖房として使用します。

二階の個室に4W程度の高効率の小型ファンで各部屋に暖気を運び込みます。

夏冬ともエアコン一台で省エネで快適な生活が可能です。