起業して5年目位までは「清水の舞台から飛び降りる気持ちでハリマハウスさんに決めました」この言葉をよく聞いた。

何も言わずに契約して頂いたお客様も同じ気持ちだったと思う。
すべてのお客様が総合住宅展示場を巡り雑誌や専門書を読む。家族に合った家を選ぶのに大変熱心で頭の良い人だ。実績が無く一人で住宅を請負う、いわば実態の無い会社を選ぶ事は常識では考えにくい。おまけに他社より決して安くはない。
この不可能なような事が可能になったのはなぜだろうか。
やはり快適な生活が出来る事を何よりも優先する人がいるということだと思う。
話は変わるが総合住宅展示場での営業は、如何に他社よりも早くお客様を囲い込めるかで決まる。お客様に情報が増えれば増えるほど契約できる確率は下がる。
外断熱の商品がない営業が、外断熱が良さそうだと理解したお客様にアプローチするには、シロアリや火災を持ち出し、外壁に重いタイル貼りの提案が受入れられれば逆転できる可能性は高くなる。
しかしその無理が複雑な契約を生み、クレームの元になる。

そこで私が考案した営業手法は当時画期的なものだった。いや今も使っている後輩がいるはずだ。
お客様は時間の許す限り各社の展示場を回り、比較して家族で決めようと総合展示場にやって来る。そして回り始めるのだがこれが時間が掛かる。ゆっくり説明を聞いていると、せいぜい1日3社程度しか回れない。
そこで私は自社の説明後、他社の説明をした。訪れたい住宅メーカーを聞き必ず長所と短所を交え公正と思えるように説明する。主だった商品名はすべて覚えておくのがポイントだ。表情を細かく観察しながら10社程度説明後、お客様の計画内容を聞く。
家族構成と建築敷地の特徴から、予算が合えば偶然にも我が社が一番計画に合っていることを結論付ける。そうする事によりそのまま帰るお客様が多いことも解った。
プランニング後予算通りの見積を出せば契約だ。しかも競合が無いから計画に無理が無い。契約後のクレームがぐっと減る。
「究極の展示場接客」と題しこの方法をレジメにして勉強会も行った。商談に同席してブレを修正しながら目標に向かう。チームの契約数も伸びていった。

起業後の営業スタイルは自然とその逆になっていった。出来るだけ情報量は多く、新しい情報も知って頂き、お客様の判断や相談を待つ。
より快適な家を造るために、新しいことに挑戦したくなる。すぐれた設備や工法をためらいなく実行できる自由が今は何よりも強みだ。