創業当初は先輩方の教え通り断熱材を厚くして高断熱にした。それに伴い発生する壁体内結露を防止するために、高気密化してきっちり閉じられる家を創った。第三種排気型計画換気も、高気密化により必要換気量を最小の熱ロスで抑えられる。高断熱化についての反対意見は少ないが、高気密化については理解不足の方が少なくない。基本はこのきっちり閉じられる家である。
高気密化による思いがけないクレームも経験した。
室内が負圧になるため、隙間があるとそこから外気が入り込む。その経路に防儀剤などが塗られていると、その臭いと薬剤を引っ張ってくる。コンセントボックス回りを必死になって塞いだ事を思い出す。排水経路も要注意だ。必ず単独で外に出しトラップを設ける。室内の臭いには神経質になる。
もう5年位前になるだろうか、武蔵工業大学の宿谷昌則教授のセミナーに参加させて頂いた。
エントロピーやエクセルギーと聞きなれない言葉に戸惑いながら、私のこれからの家創りに欠かせない考えである事は理解できた。宿谷昌則教授は「私たちに今求められている事は、あまりにも簡単に捨ててしまったパッシブ型技術の持つ特徴を引き出せるような(等身大)のアクティブ型技術を改めて構築し直すことではないかと思う」と述べている。
寒くて熱を逃がしたくない季節には、きっちりと閉じられる高断熱・高気密性能で熱損失を抑え、そして太陽熱を取込み蓄熱する。窓を開ければより省エネで快適な室内環境が得られる季節には風を入れ排熱、夜間蓄冷、自然エネルギーを活用するパッシブ型高断熱・高気密住宅をこれからも発展させながら創る。
高断熱・高気密性能を基本として、遮熱・蓄熱・蓄冷性能を加える自然エネルギーを活用した建築環境が快適で省エネにも繋がっている。