蓄熱式床暖房を施工して20年になります。

高断熱・高気密住宅には必要ない設備だとか、故障したら修復できないとかの噂話から、実際のところはどうなんだろうと迷われている方も多いことでしょう。

そこで20年の施工経験から得た事をまとめてみたいと思います。

蓄熱体にコンクリートを使用していますが、これは安くて、どこででも手に入る蓄熱材料だからです。熱容量は水が多いのですが扱いにくい材料ですし、商品化されている蓄熱材は、コンクリートに比べ費用対効果から使用できる商品はまだありません。

コンクリートに埋設する温水配管は、コンクリート打設前の点検が重要なポイントになります。配管が折れていたり、曲りがきつい場合は温水をスムーズに流せません。

熱は温水で運ぶことも重要なポイントです。サーマスラブのような電熱ヒーターや面状発熱体を使用した場合、熱源の変化に対応できません。今はまだ深夜電力が安いですが、電気料金が高くなる可能性があります。熱源がガスでも灯油でもヒートポンプでも、お湯で熱を運ぶシステムは熱源の変化に対応しやすいシステムです。

温水配管はコンクリートの蓄熱体に覆われ、紫外線などで劣化することもなく安定した状態ですが、万が一、何かあった場合にメンテナンスのできる構造が安心です。

温水配管を基礎コンクリートに埋設してしまうと、建物を壊さない限りメンテナンスができません。基礎の上に温水配管し蓄熱体も基礎上に持ってくる構造であれば、部分的な修復が可能です。

「高断熱・高気密住宅に床暖房はいらない」か。

室温と床や壁の温度の関係ですが、室温よりも床の温度が高いほうが快適性に勝ることは宿谷正則教授の「エクセルギー消費線図」でも明らかです。

ハリマハウスも加盟している高断熱・高気密住宅の「新住協」は床下エアコンに取り組んでいます。室温よりも床の温度が高いほうが快適なのを身を以て体現しているからでしょう。

その床下エアコンよりも床温度を自由にコントロールできるのが蓄熱式床暖房です。

快適な輻射暖房として、パネルヒーターや床暖房がありますが、蓄熱していないので運転を止めると寒くなります。

蓄熱の効果は、熱損失係数Q値が高くなるほど顕著で、Q値1.0w/㎡k程度の住宅では、「2~3時間ヒートポンプを運転するだけで一日中暖かい」とお客様から喜びの声を頂いています。

冬季の日射熱取得は暖房負荷を軽減する上で重要なポイントですが、蓄熱式床暖房の蓄熱層は日射熱取得でも大きな役割を果たしています。

晴れれば太陽熱のダイレクトゲインだけで暖かく、曇りや雪の日だけ数時間ヒートポンプの蓄熱運転で快適な暖かさの住宅が視野に入ってきました。