創業から体験ハウスを建てるまでの7年間は非常に厳しかった反面、お客様とは楽しく仕事ができました。

なにしろ実績も無く事務所も無く一人でやっている工務店に、何千万円の大金を預けるわけですから、かなり信頼されていたと思います。

お客様と二人三脚で、設計から設備、照明計画、内装、外壁を選び、外構工事まですべて決めながら工事に入り、現場での打ち合わせ、変更の相談、御見積をして、現場の清掃、残材処理、職人と資材の手配を行っていました。

懐具合を案じてか予定より早く入金があったりしたこともありました。

そして完成後「大変暖かく気に入っています。清水の舞台から飛び降りてよかったです」と感謝されました。

そのような合間に高断熱・高気密住宅の理論を、住宅技術評論家、南雄三氏のセミナーで学びました。外張断熱と充填断熱、第一種換気と第三種換気、パッシブかアクティブか。

内部結露を起こさない壁構成のポイントは「外に行くほど解放」だと分かったのもこのセミナーでした。

室内側は透湿抵抗を高くして湿気を壁の中に入れず、室外側は透湿抵抗を低くして湿気が外に出やすい構成にします。

このことは窓の結露にもあてはまり、室内側にハニカムサーモスクリーン等を入れると結露するのは「外に行くほど解放」の逆だと分かります。リフォームで既存のアルミサッシの内側に断熱内窓を入れる場合にも、結露するかどうかはすぐわかりますよね。

見よう見まねで始めた高断熱・高気密住宅ですが、どの程度断熱・気密が必要なのかは、実践して初めて分るものです。相当隙間面積C値が1.0c㎡/㎡の建物と0.5c㎡/㎡の建物では、明らかに外部からの音の入り方が違います。それは漏気による熱損失にも通じることから、気密性能は0.5c㎡/㎡以下にしたい。

断熱性能も熱抵抗値でいえば、壁は2㎡℃/W以上、屋根は4㎡℃/W以上は欲しいと思います。次世代省エネ基準の設計及び施工の指針(みなし仕様)もほぼ同程度を要求しています。

屋根は高性能グラスウール16Kで185㎜以上、壁は高性能グラスウール16Kで90㎜以上となります。熱損失係数Q値では1.60W/㎡Kが目安でしょう。
図4-11 Q1.0-X 住宅の暖房エネルギーと目標値(Ⅳa地域)
次世代省エネ基準Ⅳa(八王子A)=Q値2.70  Grade1=Q値1.60程度 Grade2=Q値1.35程度 Grade3=Q値1.25程度 Grade4=Q値1.00程度

サッシも重要です。樹脂アルミではなく、オール樹脂サッシにすべきです。

こなれた価格で、防火認定も取れていることから、出はじめに樹脂アルミを何件か使いましたが、窓からの冷輻射で不快な室内となりました。壁、屋根の断熱性能が高い分、余計に不快に感じるのでしょう。U値で1.7W/㎡Kは最低レベルで、1.3W/㎡K程度の性能が欲しいところです。

1999年、カネカのソーラーサーキット工法のFCに加盟している、マツミハウジング松井修三氏の「いい家」が欲しい。という本が書店に並び話題となりました。

それから外断熱が注目を集めることとなります。