起業するきっかけを作ってくれたのは㈱ウェルダンの兼坂亮一社長である。
平成六年ABCハウジング八王子住宅公園に㈱ウェルダンがモデルハウスの建築をはじめた。
これからの競合相手となる建築工法を毎日のようにチェックしていたある日、現場を見学していると「何しているの」と話かけられたのが兼坂社長だった。
とっさに「面白い工法ですね」と返答した。それからよどみなく説明をして頂いた。自慢をしているようでもあった。
兼坂社長を見かけると立話をするようになり、私がいる会社の先輩だということも知った。
完成しオープン後も私をモデルハウスに招き入れてくれた。内部には色々な情報がある。競合相手の営業所長を気安く中に入れることは私には考えられなかった。
温湿度計で24時間採った室内と室外のデータを見せていただいた。内容よりも、そのようなデータを取る事に驚く。
そして住宅に対する価値観も変わっていった。
社内で私の課は毎期ほとんどトップの成績を残していた。

仕事も面白く部下も何かと頼ってくる。そのような環境にどっぷりと浸っており独立など考えもしなかったが家族に兼坂社長の話をした。
独立したら応援もしてくれるらしい。聞いていた妻が予想もしないことを言った。
「独立したほうが良い」 失敗してもよい。一度きりの人生だ好きなことをすれば。
そのような内容だったと思う。しばらく時間が過ぎた。
何処からか「独立しろ」と背中を押されるように気持ちが固まる。43歳の夏だった。