(財)建築環境・省エネルギー機構が「健康維持増進住宅・実例集」を出版するにあたり「実例を紹介しませんか」とお誘いがありました。

願ってもない機会なので、お客様のH様にお願いし、2月7日の寒い日に実例集の打合せに御伺いしました。

H様は9年前からハリマハウスで設計・施工した、熱損失係数Q値1.44W/㎡k、隙間相当面積C値0.2c㎡/㎡の高断熱・高気密住宅に住まわれ、冬期の太陽熱床蓄熱の工夫や、蓄熱式床暖房の蓄熱運転時間、運転温度などを色々と試し、最良の設定をしています。

その中で特に参考になるのが高断熱・高気密住宅の過乾燥対策です。
住み始めた頃は、加湿器を2台購入して加湿していましたが、電気代が高いのと、水入れと掃除の手間もかかるため2年でやめたそうです。

その後、水盤とか観葉植物とか、色々と試したそうですが最終的に浴室の水蒸気をうまく利用することで解決したそうです。

以下はH様の寄稿原稿です。
居住を始めてからの課題は冬場における乾燥,すなわち,家屋内(室内)湿度の極端な低下であった。大容量の加湿器を用いても,24oC程度の室温における湿度を38%以上に調節することは不可能であった。種々の検討から,浴室から湿気を多量に含んだ空気の流れを1階各室の送る可能性があることが判明した。換気はキッチン,トイレおよび浴室からの一体排気方式をとっているが,浴室タイル壁面を温水で濡らし,かつ浴槽の蓋を外して一体排気を停止すると湿気に富んだ空気の流れが1階全体に広がることがわかった。室内湿度は例えばキッチンに市販の湿度計を置くことによってモニターすることができる。外気湿度が氷点下の外気温において20%を切っても,24oC程度の室温において室内湿度を50%を超える湿度に加湿することができる。なお,モニターしている湿度の読みに従って浴室タイル壁面への温水放射を停止したり,さらに浴槽蓋を被せたり,一体排気方式に戻すことによって室内湿度を常時50%程度になるように調節することができる。一体排気方式の停止は,トイレ臭気の拡散を来すから,その程度を勘案しつつ停止を行う。また,使用しているトイレ具にパワー脱臭の機能があれば,これを適宜使用することによって臭気拡散を抑えることもできる。
以上に記したような家屋の特徴を生かして,生活すれば,室温22.5~26oC,室内湿度50%程度とする健康維持増進住宅としての運用できる。このような運用によって,それだけで冬期のインフルエンザ感染は十分に抑えることができることは勿論である。